『HAPPIER―幸福も成功も手にするシークレット・メソッド ハーバード大学人気No.1講義』タル・ベン シャハー(著)、坂本 貢一(訳)レビュー
『HAPPIER―幸福も成功も手にするシークレット・メソッド ハーバード大学人気No.1講義』タル・ベン シャハー(著)、坂本 貢一(訳)を読了したので、レビュー。
筆者は、「幸せを、「喜びと意義の同時体験」と定義」している。
また、「幸せは、どんな体験の評価にも利用可能な、共通の通貨」とも記す。
4つの幸せモデルを提示し、至福型こそが目指すべきものと説明する。
4つの内訳は、出世競争型、快楽型、悲観型、至福型。
出世競争型の考えは、「目的地に到着しさえすれば永遠の至福を手にできる」というもの。
快楽型は、「重要なのは今を楽しむことだけであり、努力は苦しみである」と考える。
悲観型は、「幸せに生きる事は、どうあっても不可能だ」とする。
至福型は、「可能な限り多くの時間を、現在の利益と未来の利益を同時にもたらしてくれる活動に振り向ける」。
「「喜び」はまさに「現在の利益」であり、私たちは、「未来の利益」をもたらしてくれる目標や活動に「意義」を見いだします。」
「幸せには、現在と未来双方の利益が必要」なため至福型が正しいとしている。
また、「幸せになるには、働く必要がある」とする。
そして、天職の見つけ方を示す。
「天職を見つけるには、徹底した自己分析が不可欠で」あり、そのための方策の一つとして、MPSプロセスが説明される。
以下の3つ、
・意義(meaning):自分は特に、どんなことに意義を感じるのだろうか?
・喜び(pleasure):自分は特に、どんなことに喜びを感じるのだろう?
・長所(strength ):自分は何が得意なのだろう?
について考察し、「重なり合っている領域を特定すること」によって天職を探るというもの。
「私たちの幸せのレベルは、「私たちが自分の仕事をどのようなものとして認識し、それを自分と他の人たちにどのように説明できるか」によって、大きく左右される」ため、天職を探るのは重要。
他にも、「幸せブースター」と呼ばれる「それほど多くの時間を必要としない活動−喜びと意義をもたらしてくれる、数分から数時間で行える活動」を取り入れるというコツを紹介したり、「この社会の人たちは、一般に、忙しすぎ」るため、「生活を単純にすること」を勧めたりしている。
主な内容としては、こんなところか。
最後の方は、「幸せ革命」などと言い出して、これまで目指されてきた物質主義的な考え方などからの転換ということなのだろうが、少しうそ寒い感じもある。
いずれにせよ、要するに、現在(喜び)と未来(意義)と自分(長所)とを考えろということになるのだろう。
人間は自らを意識し、未来を予見する力を持っているので、現在の喜びだけを目指していても幸せにはなれない。
逆に、未来(意義)だけを見て、現在(喜び)を犧牲にするのでは、不満を抱えた時間が増えてしまい不幸せになってしまう。
同時に、現在(喜び)と未来(意義)を満たすように進もうとしても、自分(長所)と見合わなければ、どちらも達成されない。
無論、「何に喜びや意義を見出すのか」については、自分にしか分からないというところもある。
ただし、「天職を見つけるには、徹底した自己分析が不可欠」としながら、「MPSプロセス」など、書籍の中で示された例だけでは、分析のための武器としては不足だろう。
また、「ハーバード大学人気No.1講義」などと謳われているが、処世訓的な内容が多く、学問的とは、とても言い難いようだ。
おそらく1つの原因は、「喜びや意義がどこから生まれるものであるか」という点についての掘り下げが、なされていない点にあるのではないか。
結局、幸せを喜びと意義の2つに分解したまでは良かったが、その後は、2の周りをうろつき、外側から観察して分かった断片的なコツのようなものを紹介することに留まっている印象である。
それほど、幸せというものが捉え難く、多くの内容が統合された結果であるということなのかもしれない。
HAPPIER―幸福も成功も手にするシークレット・メソッド ハーバード大学人気No.1講義
- 作者: Tal Ben‐Shahar,タル・ベンシャハー,坂本貢一
- 出版社/メーカー: 幸福の科学出版
- 発売日: 2007/12
- メディア: 単行本